NISHIO GARAGE


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2000  Vol. 8


全日本ラリー選手権四駆部門第5戦 ひえつき'00 in 椎葉

 

西尾、1CPタイムアウトで戦線離脱

ライバル不在のラリーで奴田原が余裕の勝利

 

 一昨年までこの「ひえつき」は7月下旬に開催されていた。一年で一番暑い時期に宮崎で行われるラリーとはどんなものかというと・・・。

 

 全日本仕様のラリー車には通常エアコンがついておらず、カーペットもアンダーコートもない鉄板剥き出しの車体にシートが二つ固定されているだけ。真夏の太陽の下では、オーブントースターに入っているようなもの。ホコリが入らないようダートでは窓は閉めきって走る。雨が降ればホコリは立たないが、雨水や泥水が入らないように、やはり窓は閉めたまま。そして、ガラスが曇らないようヒーターを全開にする。

 しかも宮崎ではこの時期、台風や大雨に見まわれる確率が非常に高い。こう して毎年、選手たちは汗でビショビショ、クルマはドロドロ。雨の中でタイヤ 交換をすれば頭からずぶ濡れ。もちろんCPのオフィシルはもっと悲惨。なん とか別の時期にできないものだろうか、と誰もが思っていたにちがいない。

 

 そ してとうとう昨年初めて日程が5月に移された。日なたは多少暑いが木陰は涼 しい。美しい新緑の中、普段は不快なホコリでさえラリーの雰囲気を盛り上げ ているように感じられた。気持ちがよかった原因は、自然 環境のよさだけではなかっただろう。イベントの運営も、それを迎える椎葉村の人たちのホスピタリティも、素晴らしかった。

 しかし毎年都合よく好天とはいかない。いつもなら5月中旬に来るらしい「メイストーム(5月の嵐)」というのが、今年はラリー当日に来てしまった。金曜日のレッキが終わるころに降り出した雨は、一晩中降り続き、土曜日になってますます激しくなった。気象台からは「大雨洪水雷警報」が出されていたが、ラリーは予定どおり土曜日の午前10時01分にスタート。競技車が1CPに着くころ、雨は滝のようになり、暗い空には時おり稲妻が光った。

 西尾/山口組は1CPのチェックインを数分後に控えてヘルメットをかぶり、イン ターコムが聞こえることを確認した。そしてクルマを前に進めようとしたとき、 エンジンがいつの間にか止まっていることに気づいた。西尾が何度も始動を試みたが、セルは空しく回るだけ。前夜にミッションを積み替えたときのミスか、それとも先週ガソリンタンクを換えたときのミスか? チェックイン予定時刻まであと2分しかない。西尾はクルマから降り、それらに関連する配線を調べるが、どこにも異常はない。しかし、エンジンはいっこうに反応しなかった。

 最後尾の奴田原/小田切組が去って数分後、早くも先行車がやって来た。SS1と同じ場所がSS2となるため、1CPと同じ場所に4CPが開設される。あと10分ほどで1号車が来るという。西尾はもういちど徹底的に配線をチェックすることにした。激しい雨のために道路は川になっている。そこに寝そべってクルマの下からも調べてみたが、やはりどこにも異常はなかった。もう考えられるのはこれしかない、たぶんちがうとは思うが、とECUに目をやった。なぜか外側に水滴がついている。ユニットを開けると基盤にも水滴が!息を吹きかけて水を飛ばし、再度接続すると、エンジンは難なくかかった。

 漏水の原因はわからなかったが、とりあえずユニットをガムテープでシールし、たまたま持っていたビニール袋に包んだ。これで少なくともECUに水が入ることはない。特別規則書によるとチェックポイントの閉設は最終号車通過予定時刻後30分だから、まだ間に合うはず。大急ぎで1CPに入り、「1CP10時41分」(予定より23分遅れ)と「2CP(SS1スタート)10時47分」のカードをもらった。

 しかし、同じ場所に開設された4CPには、すでに先頭から数台がチェック インしていた。CP責任者らしき人が進み出て、特別規則の中の「チェックポイント閉設の時刻は状況に応じて変えることがある」という項目をここで適用 したい、言った。「我々もこういう状況でラリーをしていますので、ご協力ください」という彼の言葉に、西尾は即座に「わかりました」 と答え、クルマのゼッケンをはずした。

 23分遅れで230秒のペナルティを受けるとはいえ、悪天候でリタイヤ車 が続出すれば入賞も期待できる。しかも今年は全戦のポイントが有効で、完走するだけで完走ポイントがある。走りたいのはやまやまだが、西尾はオフィシャ ルの言葉を素直に受け入れた。

 今回のラリーでオフィシャルの判断に即座に従った西尾の姿勢は、他の多くの選手に評価の言葉で迎えられた。しかし、そんなことはスポーツならば本来当然なのだ。当たり前のことが当たり前のこととして受け入れられる日が、日本のラリーにおいても早く実現してほしいと願わずにはいられない。

 

Cクラス競技結果(出走19台、完走11台)

順位 クルー 車両 タイヤ 総減点(秒)
1位 奴田原文雄/小田切順之 ランサー YH 2851
2位 田口幸宏/田口雅生 ランサー YH 2887
3位 勝田範彦/北田稔 インプレッサ DL 2887
4位 大嶋治夫/星野元 インプレッサ YH 2905
5位 菅野正之/小久保昌巳 ランサー YH 2937
6位 松井孝夫/遠藤彰 ランサー YH 2959

 

Date  2000年5月27日午前10時〜午後12時
Place  宮崎県椎葉村
Data  SS総距離 46.03km