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2000  Vol. 22


モンテカルロカップ スーパーSSツイントライアル イン ヒロシマ

 

西尾、北村いずれも優勝ならず

〜準決勝で敗退するも、ともに3位表彰台は確保〜

 

レポート:見物人・山口顕子

 WRCの「スーパースペシャルステージ(スーパーSS)」と、毎年WRCのシーズンオフに行われる「レースオブチャンピオンズ」にヒントを得た「ツイントライアル」が、日本で初めてJAF公認の公式競技として開催された。それが12月3日に広島県・テクニックステージタカタで行われた「モンテカルロカップ スーパーSS ツイントライアル イン ヒロシマ」だ。

 タカタはもともとダートラコースとしてはきわめてハイスピードで、走って面白く見て面白い。タカタのオーナー佐々木氏は、これをさらに面白くすべく、2台が並んで走れるようにほぼ全線にわたって2レーンが平走するコースに改修した。この2つのレーンは1箇所でブリッジとトンネルに分かれて立体交差する。だから、アウトコースからスタートした選手も、インコースからスタートした選手も、2周すれば同じコースを走ったことになる、というわけだ。

 今回設定されたのはA、B、Cの3クラス。AはダートラのA4クラス車、BはダートラのC1、C2クラス車、CはダートラのC3、Dクラス車、という分け方になっていたようだ。ただし、2台ずつのトーナメントで半端が出ないように、本来のクラスとは別のクラスで出走させられた人もいた。が、今回はテストイベントでエントリーフィーも無料なので、それでも喜んで参加してくれたそうだ。

 競技開始は午前10時、第1レースは全日本ダートラA4クラス2000年ランキング4位の屋代博美と11位の中村英一の対決。初めて見るランサーの2台並走はなるほど迫力があるが、普段は砂利のない路面で走ることが多い彼らは、浮き砂利路面にびくびくしているといった感じ。第3レースに登場した綾部さんは、浮き砂利をものともせず、それまでの4台とは比べ物にならない速さでモンテカルロコーナーに進入し、豪快な走りでラリードライバーの実力を見せつけた。もちろん、対戦相手のランキング8位の吉村を破って準決勝進出。続く第4レースに登場した北村和浩も、ランキング12位の古澤を大差で破って準決勝進出を決めた。

 ラリー車がA車両規定にあてはまらないという理由でCクラスに入れられた西尾は、第14レースに出走。トンネル出口から横っ飛びに姿を現したときには、相手のDクラスランキング15位の長谷井をすでにかなりリードしていた。圧巻はモンテカルロコーナー。そのケタはずれのスピードに、私の左隣で携帯椅子を並べて座っていた二人の観客は「凄い!」と叫んで立ち上がり、呆然と見送る。右隣に立っていた二人組は「うわーっ」と叫んで呆然と見送る。かくいう私も、ホームページ用の写真を撮るのも忘れ、ただただそのコーナリングに見とれていた。西尾がバンクコーナーに入り、早々とテールランプを見せて次の右コーナーにアプローチする間も、あたりはため息とも叫びともつかぬ声で騒然としたまま。そして、その姿が見えなくなってやっと、「ほーっ」と長い息を吐いて左隣の二人は腰を下ろし、周囲は静かになった。

 今回はすべての出場者の順位が決定するよう全部で56レースが組まれており、Aクラスの準決勝は第26レース。北村対綾部の注目の一戦だったが、アウトコーススタートの北村が第一コーナーでインコースからのハネ石を受け、フロントガラスにヒビが入った。並走するコースは面白いがアウトコースは常にイン側からのハネ石の危険にさらされる。これで集中力を欠いたのか、途中でスピンしてしまった。いっぽうの綾部は、さらに調子が出てきたようで、インぎりぎりをインリフトしながらドリフトで通過するという巣晴らしい走りで決勝進出を決めた。

 第31レースはCクラス準々決勝で、西尾はDクラスランキング6位の和田と対戦。こんどは高速S字でカメラを構える。誰よりも深いアングルで激しくドリフトしながら通過する西尾を見て、隣で見ていた観客たちは、「うわっ、こいつ、スゲー速いな!こんなに速かったら、さすがの梶岡も負けるかもしれん」と話している。どうも地元広島のダートラファンで、ラリーのことは全然知らないようだ。たしかにC3仕様のインプレッサに乗る梶岡は、クルマもドライバーもめっぽう速く、西尾も、「梶岡には負けるかもしれん」と、今回の敵は梶岡ただ一人と見ていた。

 しかし、その梶岡は次の第32レースであっけなく姿を消してしまった。アウトコーススタートだったために第一コーナーでフロントガラスを割られ、その後はインコースのクルマに並ぶのを恐れたようだ。こうして、梶岡を破ったDクラスランキング4位の河内と、西尾は準決勝で対戦することになった。

 各レースのレーンは、抽選で決められる。西尾は準決勝で運悪くアウトコースになってしまった。第一コーナーにインコース車よりも後に入ると、猛烈に砂利が飛んでくる。勝つためには第一コーナーに先に入らなければならないが、相手がDクラス車ではそれはきわめて難しい。

 やはりDクラス車のスタートダッシュは速かった。西尾はとっさの判断で、第一コーナーは少し後ろを離れて走る作戦をとった。その他のコーナーでじゅうぶん取り戻せる自信があってのことだったが、勝ちを意識しすぎたのか、要所要所で失敗を重ね、予想外の敗北を喫してしまった。

 

 綾部に破れて意気消沈した北村も、Aクラスの3位決定戦では気をとりなおして屋代を簡単に退け、3位獲得。いっぽう、西尾もCクラス3位決定戦で国政を破った。負けたときとはちがって、ともに調子を取り戻して期待にたがわぬ走りを見せてくれたが、この日の一番のスターは綾部さんだった。「ドリフトの神様」と大げさな形容をする司会者の言葉も、今日の走りを見ればうなずける。「これぞ理想のドリフト」といえるほどの美しさを現出しつつ、限界を極めたものだけが発する凄みさえ感じさせた。決勝で炭山を破ったときの走りには、新井や西尾でさえも興奮と感動を抑えきれず、綾部さんのもとに駆け寄り、「ほんとうに素晴らしかった」と固い握手で祝福した。

 最終の第56レースは西尾を破った河内とDクラスランキング7位の高杉の対戦。高杉のクルマはスタートして間もなくドライブシャフトが折れたようで、あっけなく河内の優勝が決まった。

 こうして無事に全レースが終了したが、主催者が突如、表彰式終了後にファンサービスの同乗走行をしようと言い出した。といっても、改造車には助手席がないので、北村、綾部、西尾の3台に協力を求めてきた。たまたま居残っていた少数の観客とジャンケン大会をして、幸運な3人が決まった。この同乗走行でも綾部さんの調子は上がる一方で、さらにすごいドリフトを見せてくれた。ひとつ間違えば転倒するのではないかと思えるほどの激しさでクルマは真横に走るが、それをいとも気軽に操っているように見える。もう周囲は感心するよりも綾部さんの元気さに唖然。

北村のクルマの助手席には3点式シートベルトしかついてなかったため、北村は静かに走らざるを得なかった。西尾も頑張ってドリフトしたが、ちょっとおおざっぱ? 今日は綾部さんが一番カッコよかったね。でも、乗った人が降りぎわに、「いやーすごい!ナビはあれでほんとにノートなんか読めるのかなあ?」と、ため息まじりに言っていたところを見ると、きっと喜んでもらえたのでしょう。

 ところで、この日のもう一つの目玉だった新井くんによるWRカーのデモ走行は、昼休みにほかの出場者とはちがうコースを2周ほど走ったら、クラッチが壊れてそれでオシマイでした。チャンチャン。

 2台同時走行というのは面白いけど、今回は50レースもあったので正直なところちょっと退屈な部分もあった。来年はもっと盛り上げ方を工夫してもらって、たくさんの人に見てもらいましょう。乞う、ご期待!

 

Aクラス競技結果(出走8台)

順位 ドライバー 車両 タイヤ
1位 綾部美津雄 インプレッサ DL
2位 炭山裕矢 ランサー BS
3位 北村和浩 インプレッサ FK

 

Cクラス競技結果(出走13台)

順位 ドライバー 車両  
1位 河内渉 インプレッサ (ダートラD仕様) BS
2位 高杉卓志 ランサー(ダートラD仕様) DL
3位 西尾雄次郎 インプレッサ(全日本ラリー仕様) FK