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2000  Vol. 11


全日本ラリー選手権四駆部門第7戦 ノースアタックラリー2000

 

西尾、不本意な5位に沈む

SS1での車両トラブルのためにタイヤ選択を失敗

 

レポート:コドライバー山口顕子


 第5戦「ひえつき」でノーポイントに終わったものの、続くモントレーで今 季3勝目をあげ、シリーズポイントも奴田原に5点差と迫った。ボディを大幅に軽量化し、サスペンションの開発がやっと始まったところでの勝利だっただけに、喜びもひとしお。この勢いで北海道も、と考えるのは当然のなりゆきといえる。

 例年ノースアタックは、さすが北海道というような高速グラベルコースが必ず何か所かあり、高速コースが大好きな西尾は、このラリーをとても楽しみにしている。(付け加えれば、ラリーばかりではなく、その前後の大物釣りも。なにしろ、こちらの川では30cmはリリースサイズ。アメマスは平均的に大きいうえに、イワナ、ヤマメ、ニジマスも巨大。オショロコマですら30cmオーバーが釣れる。)
 今年はしかし、昨年使った全長15kmのハイスピードコースは道路の一部 が崩れて通行止めとなり、使えないらしい。さらに、もう一か所のコースは林道ではなく町道になってしまったため、これもSSとして使えなくなったそうだ。(99年に施行されたJAFの規則で、「通常、一般の交通に供している道路」ではSSができなくなった。林道や農道は林業や農業のための道路で 「一般の交通に供している」とはいえないが、町道や村道などは「一般の交通に供している道路」ということらしい。)

 

その結果、98年、99年は100km以上のSSが設定されていたこのラリーだが、こういう事情のために今回のSS距離は トータルで87.54kmと、少し短くなった。それでも、他のラリーよりはずっと長いし道もいい。もちろん、オールグラベル。

 

ラリーは金曜日のレッキから始まる。SSは全部で11本あるが、使うのは5か所。そのうち1か所は97年から使っているギャラリーステージで、ここだけはどういうわけかレッキなし。そこで、4か所を各2回ずつ走れるようスケジュールが組まれている。本当は2回ではどうしても確認が不充分なので3回走りたいし、ギャラリーステージのノートも作りたい。しかし、時間的、経済的諸条件を考えると、現状では、このあたりが運営する方にとってもほとんどの参加者にとってもベストな方法、というのが主催者の判断なのだろう。

 土曜日は朝7時01分スタート。WRCなどに比べるとずいぶんゆっくりしている。5時30分ぐらいにスタートすれば、もっと早く終わるのに、と早起き西尾/山口組は思いながら、夕張 から約40km離れたSS1に向かう。6.08kmのSS1を終えると、すぐにサービス。そのあと、SS2、3、4合計33.56kmを連続して消化する。

 タイヤ幅を195にするか205にするか迷った。195は操縦性がいい が、バーストしやすく、磨耗もしやすい。摩擦の小さい路面(つまりグリップの悪い路面)では195のほうが走りやすいが、グリップがよい路面では205のほうがタイムが出る。SS1では195を使い、どのくらいのタイムが出るか、磨耗がどれくらいか見てから、その後のタイヤチョイスを決めよう、という作戦を立てた。

 SS1のスタート直後はタイトコーナーの連続するきつい上り。前日までの雨で路面は濡れている。195を履いたインプレッサは気持ちよくクイクイと曲がって坂道を登っていく。3分の1を過ぎて尾根道に出ると、こんどはクレストを上ったり下ったりしながら、7とか8とか9の緩いコーナーが続く。道幅が狭くてジェットコースターみたい、と表現上は一言で片付けられるが、実際のところ、ひとつまちがうと大クラッシュのおそれがあるので、ジェットコースターよりも怖いかもしれない。しかし、ペースノートがぴったり合ってうまく走れたときは、ジェットコースターよりずっと面白い。だからラリーはやめられない。

 「今日もイタダキ」と思っていたら、突然エンジンが反応しなくなってスローダウン。西尾選手が「エンジンがxxx!!」と叫ぶ。よく聞こえなかったので、「えっ、エンジンが落ちた?」と聞き返したら、「アホか、落ちたら走れんやろ」と言われた。いや、あまりにもクルマの様子がおかしかったので、ほんとにエンジンをどこかに落っことしたのかと思ったんです。西尾の顔も、死神に取りつかれたように深刻だったし。

 あと約1km、止まりそうになるクルマをなんとか動かしてフィニッシュ。 タイムは前ゼッケンの田口幸宏に16秒も負けている。ユキヒロには悪いけ ど、これなら奴田原には20秒以上負けるだろう、と目の前が真っ暗に。 すぐにボンネットを開けて見ると、圧力ホースが抜けていた。これを差し込んでエンジンは元に戻ったが、SS1のタイムは取り消せない。そのうえ、バーストもしていることに気づいた。右後輪の内側がばっくり切れている。どこで切れたのか、まったく思い当たらなかった。

 

 天候は曇りで気温は低く、ときたま雨がぱらつく。この様子では、林道の路面はまだウェットで、SS2、3、4でも195のほうが明らかに走りやすいだろうと思った。しかし、タイムが出るかどうかはわからない。SS1をまともに走れていたら、195でどの程度のタイムが出せるのかわかったのに。しかも、SS3、4はそれぞれ13km以上あり、磨耗が心配だった。SS1で バーストしたから、次もバーストするかもしれない。実際、SS1では私たち以外にも何台もがバーストした。そう思うと195を使うのはためらわれ、 205を選択した。

 これが裏目に出てしまった。SS2はSS1と同じ場所。さっきと同じ調子で走ろうとしたら、タイヤがまったくグリップせず、右に左にコースアウトを繰り返してメロメロ。結果はトップの奴田原から6秒落ちで6番手のタイムだ。コースアウトでタイムロスしているのだから、コースアウトさえしなければそんなに差はつかないのでは、と普通の人は思うかもしれないが、こういうタイヤでコースアウトせずに走ろうとするとアクセルを抜かざるを得ない。 だからやっぱりタイムは出ない。「このタイヤはハズレやった」と西尾は後悔したが、もうどうすることもできない。あとは、なんとかこのタイヤで、 負けを最小限に食い止めるように頑張るしかない。  

 SS3は一昨年に走ったコースの逆走。中盤はクレストが多く、ジャンプ、 ジャンプの連続。これがリスキーで怖いが、調子に乗ってくると快感に変わる。今年はこの部分は上りになったので、一昨年ほどの面白味はなかったが。スタートしてすぐの区間は砂っぽい路面で、ストレートと低速コーナーの組み合わせ。タイヤのグリップ感がなく、ズルズルと上滑りしている感じに愕然とする。さらに、中盤のクレストの多い場所になって、私がペースノートを1ページ余計にめくって全然ちがうところを読んでしまった。 私の悪いところは、自分をあまりにも信じるあまり、西尾に「まちがってる!」と言われても、「ノートにそう書いてある!」と口ごたえしてしまうこと。それで、クレストの多い部分は結果としてノートなしの走行になってしまった。「見てみい、全然ちがうやんけ!」と文句をたれながらの有視界走行を強いられては、速く走れるはずがない。結果はトップの綾部から8秒落ち。クラス4番手ではあるが、上位2人とはますます差が広がってしまった。

 SS4は4年前に使った川沿いの道。ストレートと緩いコーナーが多く、アベレージスピードが高い。ひとつまちがえば大変なことになる、少しでもそんな気持ちを持つと、アクセルは踏めない。だからこういうコースは気合の入り方がタイムに大きく影響する。SS2、3でタイヤ選択に失敗したことがわかっていたので、たぶん、私たちは気持ちが引いてしまったのだろう。いつもと同じように走ったつもりだったが、タイムはトップ奴田原の19秒落 ち。1kmあたり1.38秒という大差。こうなると、「いつもはどうやって走っていたのだろう?またあんなに速く走れるようになるのだろうか?」と不安になってくる。
 

サービスに戻ってタイヤを換える。磨耗はそうひどくなかったので195で ももつだろうと判断し、今度は195を履くことにした。また、SS3、4で はオーバーヒート傾向が見られたので、ラジエーターにもっと風が当たるよう にフロントグリルをはずした。SS4では西尾選手が水温計に気を取られてときどきコースアウトしそうになったほど。

 タイヤを195に換えて、これから大逆転、と意気揚揚とスタートしたSS 5。ここはSS1、2と同じ場所。ところが、前の2回のときはかなりウェットだったのに、こんどは完全にドライになってしまっていた。こんなに急激に乾くとは思わなかった。(195では失敗だったか?)という思いが頭をかすめる。タイムは前ゼッケンの田口選手に1秒勝っただけ。その前の石田正史選 手には3秒も負けている。これでは奴田原選手には5秒負けると思った。(実 際には4秒だった。)石が出てガレガレになっている場所も多かったので、そういう場所では195でもバーストしないように西尾選手は抑えて慎重に走っ た。とはいえ、そのロスは1〜2秒程度のはずだ。

 SS6はSS3と同じ場所。今度はノートのめくり間違いもなく、最後までちゃんと走れた。しかし、タイムは田口幸宏に2秒勝っただけで、石田正史に2秒負け。あとでわかったが、奴田原には7秒も負けた。ここの路面は、195がそれほどハズレていたとは思えないから、この負けは他に原因がある、という結論を出さざるを得ない。サスペンションのセッティングがやはりまだまだなのか?  SS7の前半はホコリが立つほどになっていた。前が5分以上もあいているCクラス先頭出走の石田正史を除いて、前半の高速区間はホコリでコーナーが全然見えないという状況だった。それでも、奴田原がまたもベストタイム。そして、それに1秒差で小西が続く。私たちはSS6でせっかく小西を逆転して5位になったのに、またここで抜かれてしまった。

 1時間のサービスでクルマを整備し、夕張のパルクフェルメに入れてレグ1 は終わる。サービス会場で、PDの記者が撮ったビデオを見せてもらった。SS6の最後のほうの下りのタイトコーナー。正史や奴田原のクルマが安定しているのに比べ、私たちのクルマはフラフラと不安定だ。だからアクセルを踏んだまま一気に通過できない。たとえば、ひとつのコーナーでの差が 0.1秒としても、それが100個積み重なれば10秒の差になる。今日の結果は、そういうことなのだろう。

 

 一夜明けて、ラリーは4本のSSを残すのみ。その内訳は2か所を2回ずつ。私たちは上とも下とも差が開いていて、よほどのヘマをしない限り順位に変動はなさそうだった。そこで西尾は、この機会にタイヤとサスペンションセッティングのテストをしてみることにした。同じ道を2度走るのでわかりやすいし、他の選手とのタイム比較もできるからだ。

 普通、このぐらいの差がつくと順位キープの走行に切りかえる人が多いが、 さすがに全日本トップクラスともなるとしぶとい。なにしろ、最後の最後でエンジンが止まる人やら、コースアウトする人やらを何人も見てきている。最後まで頑張ったら何かいいことがあるかもしれない、少なくとも自分が頑張っておかないと、めぐってきたチャンスをモノにできない。そういうわけで、最後までみんなが必死になって走ってくれたことは、データを取るには非常によかったと思う。

 この日に試したことがヒントになり、サスペンションセットアップの方向性が見えてきた、と西尾は言っている。その方向で煮詰めた足を、次戦のツール・ド・東北で試す予定だ。今後のシリーズ展開は、このサスペンションセッティングの成否がカギを握るといえるかもしれない。
 

Cクラス競技結果(出走33台、完走20台)

順位 クルー 車両 タイヤ 合計タイム
1位 奴田原文雄/小田切順之 ランサー YH 1:06:47
2位 綾部美津雄/市野諮 インプレッサ DL 1:07:11
3位 田口幸宏/田口雅生 ランサー YH 1:07:43
4位 石田正史/秋田憲吾 ランサー DL 1:07:53
5位 西尾雄次郎/山口顕子 インプレッサ FK 1:08:04
6位 田中伸幸/佐藤茂樹 ランサー BS 1:08:55

 

Date  2000年7月1日午前7時〜7月2日午後1時
Place  北海道夕張市 「石炭の歴史村」スタート、穂別町、占冠村、飛高町などを経由、夕張市「花と緑のドリームランド」フィニッシュ。
Data  SS総距離 87.54km